MESSAGE
代表として、個人として
まだまだ分からないことだらけですが

代表挨拶

           

                                                                           


 もし二十歳の頃の自分に「お前は粕川土建の社長になるんだぞ」と伝えたら、その場でひっくり返るかもしれません。わたしには兄がいますから、当然その兄が家業を継ぐものだと思っていましたし、わたし自身はデザインの仕事で食べていけたらと思っていました。家庭に縛られず、できるだけ背負うものは軽く、気楽な独身ライフを満喫するつもり満々の世間知らずな若者でした。ですので、ひっくり返っている二十歳の自分にもう一言「お前は4人の子供を育てるんだぞ」「しかも全員が男だ!」とトドメの一撃を放ったらきっと気を失うに違いありません。

                                                        

 今思えば、かつてのわたしは自己評価が低かったこともあり責任を負うことが怖かったのだと思います。デザインの仕事にしても確固たる意志を欠いたまま本気で突き進むことが出来ず、流されるように家業を手伝うようになりました。とはいえ仕事内容は養豚場の修繕全般です。なかには汚れる仕事や臭いのきつい仕事もあります。若かったわたしは、そのことをかっこわるいと感じ、自分の仕事に誇りを持てないでいました。それでも毎日休まずに出勤することが出来たのは、勤勉であるのが当たり前という環境で育ったことの影響が大きかったように思います。創業者である祖父は一年のうち360日仕事に出かけるような人でしたし、当時サラリーマンだった父(前代表取締役)は、朝7時に家を出て夜の11時に帰宅する生活を送っていました。仕事を重んじることの大事さを、身をもって教えられていたのです。                                             

                                                             

 入社して5年、10年と何とか続けているうちに次第に自分が受け持つ仕事のおもしろみが分かるようになってきました。わたしたちの仕事は業種が特定できないほど色々な依頼が舞い込んできます。漠然としたイメージだけ伝えられて、「何とかしてほしい」と頼まれることもあります。それを構想し、必要な材料を手配し、具現化するまで全て一貫して自分の領分ですし自分の責任でもあります。特定のセオリーが当てはまらないこの業態は、アイデアと技術への挑戦と捉えることで、今はとてもやりがいを感じられるようになりました。

                                                                     

 仕事内容は20年前と変わっていません。変わったとしたら、わたしの心のありようです。他と比べることをやめ、今いる場所を大切にしようと思ううちに、自分の中の何かが変わり始めたような気がします。最近では、外づらばかりを気にしていたころには気付けなかった「ありがたいこと」がだんだんと分かるようになりました。

                                                                 

 例えば、必要としてくれる相手がいること。わたしにとって、会社にとって、必要とされることほどありがたいことはありません。そして、まじめに働いてくれる社員がいること。彼らも当然、汚れや臭いの中で仕事をすることがあります。きつい・汚いが敬遠される世の中で一所懸命仕事に向き合ってくれています。それからたくさんのご縁や心遣いに支えられていること。仕事上のお付き合いにとどまらず、すべての出会いや出来事が今の自分を支えてくれています。中でも一番ありがたいことは、これほど多くの感謝に気が付いたことでしょうか。

                                                                   

 かつてのもくろみとは相反して、仕事においても家庭においても、大きな責任を負うことを選んだ自分がいます。そしてありがたいことに、そのどちらの選択も微塵の後悔もありません。たくさんの良きご縁に恵まれ、良き手本に触発されて、とても充実した日々を送っています。

                                                                  

 これから先、会社経営はめまぐるしい時代の変化に対応し、ときには艱難辛苦に耐えなければならない状況もあると思います。そんなときこそ、周りにある「ありがたいこと」に目を向け、弱音をはかず環境のせいにせず、社員一丸となって道を切り開いていこうと思います。

                                                                 

 最後までお読みいただきありがとうございました。

どうぞこれからも変わらぬご支援のほどよろしくお願い致します。

代表取締役  粕川 貴之